2017年2月11日土曜日

8. 2月11日

毎年、この日になるとなんだか違和感を覚える。
2月11日は、1966(昭和41)年に「建国記念の日」に政令により決められた。
2月11日というのは言わずと知れた紀元節の日。
紀元節とは、古事記、日本書紀において初代神武天皇が即位したとされている日である。
即位した年を皇紀元年といい、これは西暦でいうと紀元前660年であるという。

日本が中国の歴史書に登場してくるのは、紀元前1世紀のころからである。
   紀元前1世紀 漢書:「分かれて百余国」
   紀元1~2世紀 後漢書:「奴国」「金印」「献、生口(奴隷)160人」
   紀元3世紀 魏志倭人伝:「倭国大乱」「邪馬台国」「卑弥呼」
これらは学校の歴史の時間に学ぶことだ。

紀元前660年というと、「分かれて百余国」と書かれた時代よりさらに500年ほど前のことになる。
そんな時代に、天皇(大王)をいただく国家ができていたなどと歴史学者、考古学者は誰も考えていないし、神武天皇以下九代の天皇は実在の人物とは考えられてはいない。
そんな国もできていないし実在もしていない天皇が即位したという日を、建国記念の日の根拠とするというのは、いかにも科学的でない。科学的でない思考が国を動かしているという気がするのが、違和感の原因になっている。

現在世界には200国以上の国々が存在していて、それらのほとんどに建国記念日がある。そしてまたそのほとんどは、新しく国が成立した、またはそれに相当する事実があった日を記念日としている。その多くは独立記念日である。欧州の各国の植民地であった国々が、支配国から独立を果たした日、もしくは独立を宣言した日である。
  イギリスから独立したアメリカやカナダ、インド、ナイジェリア、パキスタン・・・
  フランスから独立したカンボジア、ベトナム、セネガル・・・
  スペインから独立したアルゼンチン、コロンビア、ペルー・・・
  ポルトガルから独立したアンゴラ、ブラジル・・・

独立記念日以外では、新しい政治制度に移行した日を記念日とする国もある。立憲君主制になった日を記念日とするデンマークやタイ、王政から共和制に移行したイタリアなどがそれである。
また、フランスは政治体制を変えるための革命が始まった日を革命記念日とし、キューバはキューバ革命を達成した日を解放記念日としている。
新しくはドイツ、東西ドイツが統一された日がドイツ統一の日として記念日となっている。

調べた範囲で最も古いのはスイスで、1291年に3つの州が自由と自治を守るために誓約同盟を結成した日を建国記念日としている。しかし、当たり前のことであるが、歴史の古い国ほど建国の年代は古くなるので、正式な建国の日は不明だという国もある。オランダは正式な建国記念日はなく、スペイン王の統治権否認の布告をした日を記念日としているし、また、ヨーロッパ最古の君主制国家イギリスには建国記念日そのものがない。18世紀初頭にカスティーリャ王国とアラゴン王国が統合されてできたスペインにも建国記念日はない。

以上、ほとんどの国々が建国記念日、もしくはそれに相当する日としているのは、そうした事実のあった日である。しかし、例外が2つある(私の調べた範囲であるが)。
日本と韓国である。

日本の「建国記念の日」は2月11日、紀元前660年神武天皇即位の日。
韓国の建国記念日にあたる「開天節」は10月3日、紀元前2333年古朝鮮王国の祖、檀君が建国したとされる日。

建国の事実のあった日を記念する大多数の国々と、神話の中の日を記念として祝う2つの国。
隣り合った2つの国のこの発想は、それぞれどこへ向かっていくのだろうか。





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